5.02テキスト素材

POINT
■読み易く分かり易いテキストが、Webサイトの価値を高めるのに不可欠です。
■テキスト素材は「執筆→編集→校正」という流れ準備するのが一般的です。
■レイアウト、見せ方、読み易さの改善や、SEOや読み手のリテラシーを考えた調整作業が必要です。

【テキスト素材とは】
テキストは、Webサイトで情報を伝達する上で最も基本的な要素です。読み易く分かり易いテキストが、Webサイトの価値を高めるのに不可欠です。一連のテキスト情報を、タイトル、概要、見出し、本文などHTMLできちんと構造化することが、人間にとって理解し易いだけでなく、Webブラウザやプログラム、検索クローラーなどの適切な処理を支えます。ですから、テキスト素材はこのような構造を予め意識して用意すると、Webサイト制作がスムーズに進みます。

文章構造の説明図

文章構造の説明図

【テキスト素材の作成プロセス】
テキスト素材の作成は「執筆→編集→校正」という流れで行うのが一般的です。Webコンテンツにおけるテキスト制作では、クライアント(発注者)のWeb担当者や関係部署、制作会社のライターやディレクター、外注のライターなど、さまざまな担当者が関わります。それぞれのプロセスの担当者や公開承認フローを明確にしておくことが大切です。

■執筆
執筆作業は、おおまかに「コピーライティング」と「文章ライティング」に分けられます。コピーライティングは、タイトルや見出し、製品やサービスの魅力を端的に表したキャッチコピーなどを書く作業です。特にキャッチコピーの作成は本来高度な作業であり、専門家に発注する場合もあります。日常的な作業では、信頼感やお買い得感など訴求ポイント別のキーフレーズリストを用意しておき、キャッチコピーが効率的に作成しておくと良いでしょう。
一方、文章ライティングは、テーマや文字数などの条件を踏まえて、構成や展開を工夫しながら文章を書く作業です。比較的短めの文章から、数ページにわたる長い文章をコンテンツとして用意する場合もあります。漢字や送り仮名、カタカナ語、句読点、括弧、記号といった用語表記ルールの知識や、5W1Hなど標準的なメソッド、さらに論理性や読み易さを高めるためのライティングスキルが必要とされます。
「ら抜き表現」や「い抜き表現」、間違い易い表現、差別用語・禁止用語などへの注意も求められます。

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「ら抜き表現」:「食べれない」は、正しくは「食べられない」、「着れる」→「着られる」
「い抜き表現」:「本を読んでる」は、正しくは「本を読んでいる」、「着てる」→「着ている」
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文章体裁の整備はWebサイト全体の信頼感につながるため、きちんと用語表記をルール化したり、一覧表を用意して参照できるようにすると良いでしょう。特にWebコンテンツとしてのテキストには、SEOや読み手のリテラシーを考えたライティングが求められます。例えばそのWebページの主たるキーワードは何か、専門用語や難解語、外来語に関するターゲットユーザーのリテラシーレベルはどうか、といったポイントを踏まえたライティングが必要です。

表記ガイドラインサンプル

表記ガイドラインサンプル

サンプルは、石川が2009年当時に滋賀短期大学のWebサイト制作と大学案内制作のために作った表記ガイドラインです。
用語表記ルールでは、固有名詞だけでなく、漢字、送り仮名、語尾など詳細な部分まで決めておきます。

■編集
テキストをWebコンテンツとしてまとめる作業です。執筆者とは別の人間が行うのが普通で、字数や段落を調整したり、HTMLのデモページとしてまとめます。きっちりとしたマークアップやスタイル設定を行い、ほぼ完成した上で次の校正プロセスに進む場合もあります。

■校正
テキストの赤入れや手直しを行う作業です。既に一通り制作し終わったテキストについて誤字・脱字のチェックや、用語表記の整備といった基本的な作業から、テイストを崩したり主旨を逸脱しないように手直ししたり、前後文脈に齟齬が無いか確認する作業を行います。厳密さが求められるテキストは、数回にわたって校正を行います。
特定の専門分野に関する文章を校正する場合は、担当者本人が下調べをしたり、別途専門家に確認を依頼すると言った追加的な作業が発生することもあります。また、著作権などの最終確認が必要な場合もあります。

■取材やインタビュー、翻訳
ある人物に取材したり、イベントに参加して文章にまとめるといった、やや高度な作業です。通常、ICレコーダーで録音した内容を文章化し(いわゆるテープ起し)、構成や展開を考えながらコンテンツに仕上げます。
また、英語ほか外国語で書かれた文章を日本語に翻訳したり、日本語を外国語に翻訳する作業もあります。特にグローバルに事業を展開している企業

サイトで求められます。ネイティブ(その言語を母国語としている人)や本支店間のチェックが必要な場合もあります。

【テキストコンテンツの改善ポイント】
テキストコンテンツの改善には、制作フェーズで実施できるものから、戦略フェーズに遡って実施すべきものまで非常にさまざまなパターンがあります。以下はテキストに沿って、レイアウトや見せ方、読み易さに直結する改善ポイントの例となります。
個人的経験ではWebmastertool(現在のSearch Console )やAnalyticsからの実測を基に個別キーワードへの対策を施したり、AdWordsの品質スコア改善などでテキストコンテンツを変更したことがあります。(あるいは、現在もやっています)

■適切な見出しづけ
大見出しだけでなく、中見出しや小見出しを適度につけることで、ユーザーにとって理解し易いコンテンツになります。本文を表す具体的で分かり易い見出しにするよう心掛けます。また、見出しレベルの違いが一目で分かるように、文字の大きさやデザイン(色や太さ)を調整します。(SEO的にも意味があります)

■段落分け、行間、一行あたりの文字数
1つの段落が10行以上にわたる場合は適度に分割したり、行間が狭い場合には広めにします。また、1行あたりの文字数が多過ぎると、視線を左右に大きく振らなければならないのでユーザーのストレスにつながります。横幅を適度に狭めたり、段組みなどのレイアウト改善を行いましょう。

■文字色と背景のコントラスト
文字色と背景のコントラストが保たれていなければ、文章が読み難くなります。印刷の場合も同様ですが、例えば背景が薄い色ならば文字は濃い色にするなどコントラストを保ちます。これ以外に、濃い色同士で起こるハレーションにも注意しましょう。

■図表化、リスト化
文章で長々と説明するよりも、図表やリストの方が分かり易いこともあります。図表化やリスト化によってページが単調になることを防いだり、スクロール中でも目に入り易いというユーザビリティ上のメリットもあります。ただし、テーブルを組むなどの制作上の工数が発生したり、「一字下げ」や「均等割付(CSSレベル3以降で実装可)」は指定する手間が発生します。

■フォントのサイズや種類
フォントのサイズや種類は読み易さに直結します。ほとんどの場合、サイズを小さく設定してしまいがちなので、意図的にやや大きめに設定したり、ユーザーが任意の大きさに変更できるようにします。(もちろん、ブラウザーの機能で変更できるのですが)種類については欧文フォントと日本語フォントの両面から読み易さを考えて適切に設定します。

■SEO
検索エンジンでの検索順位はWebページで使われているキーワードやHTMLの用法なども決定要因とされています。そのページで訴えたいキーワードは何か、どのようにHTMLを構造化して検索サービスからの評価につなげるかなどを考える必要があります。

■読み手(ユーザー)のリテラシー
ターゲットユーザーのリテラシーレベルを考えて、専門用語や難解語への補足説明の追加、ボキャブラリー(語彙)の変更などを行います。