POINT
■戦略や戦術の決定にあたっては、他社との差別化を図るために、市場やターゲットユーザーを選別してプランニングしていくことが大切です。
■事業者側のプロダクトアウト発想だけでなく、市場が何を望んでいるかというマーケットイン発想と組み合わせてプランニングします。
■収益モデルやコンテンツ生成などの面で、ターゲットユーザーの協力や支持をどのように取りつけるかといういう視点でプランニングを行います。
【戦略設定】
かつては、あらゆるビジネスにインターネットを組み合わせることで独自性を持ったビジネスとすることができました。しかしインターネットがこれだけ普及した現在では、まったく新しいビジネスモデルを生み出すことは難しく、既存のビジネスに差別化要因を付加して展開するケースが多いようです。また、インターネットビジネスは参入障壁の低さとグローバル性から競合他社と同一のビジネスモデルになり易いことも特徴です。差別化は、セグメント特化(ニッチなターゲット)や提供するサービス財の選別(ニッチな商品)、競争相手が少ない市場などに集中する方法(ブルーオーシャン戦略)や異業種間のコラボレーションによる方法、新しい技術やトレンドの登場に合わせて既存のビジネスをアレンジする方法などがあります。また、事業者それぞれの強みや弱みを元に、採用できる戦略も変わってきます。例えば、潤沢な資金が無い中で固定費・変動費ともに運用コストが莫大なサービスを行うと、資金力のある後発のサービスに抜かれてしまうことが多くなります。逆に、貧弱な機能しか実装されていなくても、頻繁な改良によって熱心な固定ファンが自らコンテンツを追加し、宣伝に協力してくれた結果、多くのユーザーに急速に伝播するといった現象も起こりえます。現在「フリーミアム」モデルが注目されていますが、最終的には利益を上げる方法が見いだせないとビジネスは成功しません。ユーザーに対して、どのようなサービスを提供し、どのように利益を上げるかというビジネスゴールを最初から決めることが重要です。
【ビジネスゴールの設定】
おおまかなゴールを設定した後に、調査分析や実現方法の詳細な検討に入ります。通常、「市場・ターゲット分析」「ビジネス環境分析」「ニーズ・来訪動機設定」「自社商品の強み・訴求ポイント」を行います。(個人的な感覚として、簡易な提案書を作成する際は、この4つのポイントを押さえれば形は整うと思います。覚えておいて損は無いでしょう)
市場・ターゲット分析は、自分たちがアプローチできる市場はどのような世界なのか、ユーザーはどのような価値観や行動特性を持っているのかなどを調査します。つまり、市場とターゲットユーザーを理解する分析を行います。ビジネス環境分析は、自社が勝負しようとしている市場の経済状況、技術トレンド、世間で人気があるサービスの仕組み(競合)などを調査し、どのように事業に活かすかを考えます。ニーズ・来訪動機設定は、このような分析を元に、ターゲットユーザーの求めていることは何か、どうすればユーザーを満足させることができるか、ユーザーニーズに応えるために何を提供するかを考えて、目標設定を行います。自社商品の訴求ポイント設定は、ターゲットユーザーに打ち出す魅力やセールスポイントなどを設定することです。これらの作業を通じて初めて、具体的なゴールが設定できます。
ビジネスゴールに基づいたKPI設定(マイクロコンバージョン別KPI)
サイトタイプ別KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)がWEBサイト全体のゴール指標なのに対して、マイクロコンバージョン別KPIはゴールに到達するまでのプロセスの中に小さなゴールを設け、それぞれのゴールに対して、分析・最適化を行うことにより、最終的なゴールへのコンバージョン(変換、転換、ウェブサイト上から獲得できる最終成果)を最大化することができます。WebKPIを導入するメリットは大きく3つあります。
1.ボトルネックが数値化によって、把握可能
2.ボトルネックを集中的に分析・改善可能
3.効果の高い改善を効率的に行える可能性が高い
つまりKPIとは、自社WEBサイトの現状を把握し、ビジネスゴールの達成度の継続的な改善を行うために必要な指標です。
【戦術設定】
ターゲットユーザーのニーズを検討した後、どのようにしてターゲットユーザーに情報を届けるか、ユーザーニーズに応えるためのサービスや財の品揃えをどうするか、どのようにして新しいユーザーを獲得するか、どのような価値を提供して再度訪れてもらうかを考えます。戦略をより具体的な戦術へと分解していくのです。インターネットのビジネスモデルでは、一般的なプランニング手法に加えて、独自の視点を加えて考察する必要があります。例えば、インターネットの利用方法はユーザーによって異なるなどの現状があります。
インターネットが一般に普及し始めた1996年から2000年の頃、すでに社会人であった人は主にパソコンを使ってインターネットにアクセスする傾向があるようですが、当時に中学生から大学生だった人はむしろ携帯電話によるアクセスがメインであったりします。また、当時に小学生だった人の多くは学校教育でコンピュータ利用の授業が行われているので、携帯電話とパソコンの両方を自然に受け入れ活用しています。このように、ターゲットユーザーが習慣的にどのようなデバイスでアクセスするのかを考えてプランニングする必要があります。
また、収益方法を考える場合、ECモデルではマーチャンダイジングをどのようにするか、広告収入モデルでは広告出稿者が納得できる価値提供が行えるのか、Web2.0の流れとともに普及したフリーミアムモデルでは無料サービスと有料サービスの差をどのようにつけるのか、途中でユーザー課金モデルに移行する場合に起こるユーザーの離脱をどのようにしてカバーするのか、バズ(buzz)をいかに利用するかなど、利益を上げ続けるための構造設計という点からも考える必要があります。コンテンツ提供においては、双方向性メディアの特徴を活かして、事業者自身がコンテンツを提供しなくても、ユーザーが自らコンテンツを作成してくれる方法などで変動費を抑えることも可能です。このように、インターネットというメディアの特性を活かしてプランニングを行うことができます。また、ビジネス戦略上最適なパフォーマンスを生み出すために。BPRを行う例も見られます。参入障壁が低い市場であることを考え、先行事業者との差別化、後発事業者が容易に真似できないプランニングを行うことが重要です。