POINT
■予算をはじめとするプロジェクトマネジメントの項目の設定には、スコープ定義で作業内容を明確にすることが大切です。
■タスクボリュームを確定させ、その完了に必要なリソース調達の費用を算出します。
■タスクの完了に掛かるコストの算出は、各タスクの作業者の能力によって変化するため、標準化が難しいものです。
【スコープ定義の重要性】
プロジェクトマネジメントの目的は、「ヒト」「モノ」「カネ」を管理することによって、期待される成果物を所定のスケジュールと予算で達成し、計画された利益を生み出すことにあります。この3つの管理項目を活用するには、プロジェクトの完了条件を満たす作業内容を確定させることが最初に必要となります。プロジェクトの作業内容を「スコープ」と呼び、作業内容を確定させることを「スコープ定義」と呼びます。プロジェクトが完了する条件を設定し、スコープを定義することで初めて、プロジェクトマネジメントが可能になります。
【予算の設定】
スコープ定義を行うには、クライアント(発注者)が作成したRFP(Request For Proposal)を元にしたオリエンテーションやヒアリング作業をもとに、要求を明らかにすることが必要です。次に、スコープ定義によって明確になった作業範囲を、数値として管理可能な単位に細分化する必要があります。この作業によって明確になった一連の作業内容(タスク)構成をWBS(Work Breakdown Structure)と呼びます。
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WBS(Work Breakdown Structure)
プロジェクト全体で必要なタスクを細かく分割して作る構成図。タスクを大きな単位に分割して、
それぞれをより細かな単位に分割する階層的構造が一般的。(→タスクブレイクシート)
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タスク項目とタスクボリュームを元に、以下の作業を行うことでプロジェクトに掛かる費用の算出を行うことができます。
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1.タスクボリュームを元に、そのタスクを完了させるのに必要な人材の選定
2.タスクの達成に必要な人材以外のリソースの算出
3.選定された人材の能力を元に、そのタスクを完了させるのに必要な作業日数の算出
4.選定された人材がタスクを完了させるために必要なリソース調達にかかる費用の算出
5.タスクの達成に必要な人材以外のリソース調達に掛かる費用の算出
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これらの作業を通じて算出した、スコープを達成するための費用合計を「積算コスト」と呼ぶことが多いようです。積算コストに利益を加えたものがプロジェクトの予算となることが理想的なのですが、実際にはスケジュールやリソース調達に掛かる費用によって変化することが多いものです。WebサイトやWebサービスなどのソフトウェアは、その進行に合わせて要求が膨らみ、スコープ自体の変化やタスク数及び各タスクのボリュームが増加するケースが頻繁に見られます。その場合、プロジェクト完了までに必要なコストやスケジュールにも影響するため、スコープ定義をきちんと行うとともに、スコープ増加を見越した予算を確保しておくことも重要です。
タスクの見積りにあたっては、見積算定方式、前例比較算定方式、科学的算定方式など複数の手法が存在し、各算出者の判断や方針によって適切な方法が採用されるため、標準化は困難です。一般的には、それほど属人的な高い能力を必要としない単純作業には(例えばテンプレートを元にしたHTMLの量産、イメージの単純加工など)、数量単位の費用計上が行われる一方、作業者によってクオリティーが変わるような高度、複雑な作業については、期間単位での計上が多いようです。
※見積の方法
見積算定方式
プロジェクト計画書や提案依頼書(Request For Proposal、RFP)を元に、制作単価決定者が、工数や諸経費を経験的に見積ることにより、制作メンバーの賃率及び諸経費を加算して最終的に制作単価を決定する方式のこと。
前例比較算定方式
過去の同種類のプロジェクトやタスクを基準として、対象となるプロジェクトや作業内容を比較し、必要に応じて修正を加えながら見積る方式。
科学的算定方式
豊富な資料を元に極力科学的に妥当と思われる条件を前提として見積る方式。コストを構成する各要素について科学的な分析を行い改善措置を講じ、その時点で合理的と判断された工数や作業の方法を元に算出します。