2.06 インターネットのデータ活用とWebサービス

POINT
■RSSに代表されるフィードやWeb APIによって、インターネット上の情報は特定のWebページに固定されること無く、より拡散するようになりました。
■さまざまなじょぷ法を組み合わせて、新しいWebサービスを安価に立ち上げることが可能になり、結果として情報の提供元にはビジネス上も大きな恩恵が与えられることになりました。
■広告掲載料を収入源とするビジネスモデルでは、フィードやWeb APIを通して情報へのアクセス経路を増やす方法が、価値や成果を高める方法として採用されています。

【インターネットにおけるデータの活用】
インターネット上の情報が増大し、さまざまな情報端末で活用できるようになりました。端末それ自体の進化や情報発信の敷居が下がったことだけでなく「フィード」を用いたシンジケーション技術と「Web API」という仕組みによって、情報資産の効率的な再利用が可能になったことも大きいでしょう。
■フィード
フィードとはWebコンテンツの更新概要を配信する為に生成されるメタデータのことです。また、そのフィードフォーマット自体を指すこともあります。代表的な形式に「RSS」や「Atom」などがあります。WebサイトはURLによって場所が特定できるWebページの集合体として存在しますが、フィードを用いることによって、そのページに書かれている情報の概要や全文を、ページ(URL)に固定されていないデータとして取り出すことができます。そのため、特定のWebサイトの更新データをフィードリーダーで集約して、効率よく情報を集約したり、興味のある情報だけを見に行くことが可能となり、より多くの情報を集約できるようになりました。
また、フィードは、他のフィードと組み合わせられるのも大きな特徴です。フィードで得た情報を元に、別の場所にあるWebページに情報を掲載したり、MP3や動画などのリッチメディアの配信を行うことも可能です。
■ Web API
あるWebサイトで保有している情報を別のサイトでも利用出来るようにする為の取り決めがWeb APIです。GoogleやAmazon、Yahoo!などの大企業からベンチャー企業に至るまで、自身が運営しているWebサービス内にあるデータを有償または無償で外部に開放することによって、データ所有者でない人が、そのデータを用いたマッシュアップサイトを安価で迅速に構築することができるようになっています。また、YouTubeやニコニコ動画では、APIではなく独自タグを記述する事によって、所有しているデータを別のWebサイトで表示することが可能になっています。これらの技術を用いることによって、インターネット上に在るさまざまな情報が複数の場所から参照することが可能になりました。
Webサイトやデスクトップ上で動作するウィジェットの多くは、最新情報をフィードで取得して表示していて、各種端末に最適化された情報を得ることが可能となっています。Web APIを活用した専門性の高いWebサイトが誕生したことによって、ユーザーは自分の求める情報が探し易くなるなどの恩恵を得ました。インターネットビジネスの中には、こういった技術を用いて広告価値を高めたり、マッシュアップサイトを構築して新たな収入源として運営している者も存在します。このようにビジネス目的でのWebサービスの活用という意味でも、フィードやWeb APIの存在は極めて大きいものになっています。

補足1.RSSについて
日本語サイトでは、普及しているRSSのほとんどがRSS 1.0を用いているため、一般にはRSSは RDF site summary として認識されています。ブログでの更新情報の配信として用いられている場合が大半を占めていますが、ニュース配信サイトで最新ニュース、放送局で番組情報を、各種企業においてはプレスリリースや新製品情報・サポート情報などを、RSSを使ったヘッドライン情報として配信する事例も多いようです。音声データファイルを公開するための方法であるポッドキャスティングにも使われています。
RSS 2.0に代わるコンテンツ配信技術としてAtomと呼ばれる新しい規格が策定されました。ウェブサイトの更新情報等のメタデータやコンテンツの配信、保存を受け持つXML文書の仕様です。RSS 1.0、RSS 2.0、Atomは、いずれにも集約されることなく各々が広く普及しています。多くのRSSリーダーは、それら全てに対応し、ウェブサイト側もフィード配信のために複数を利用することも珍しくないようです。グーグル社もGmailでメールの内容をAtomフィードで提供しています。

RSSマーク

RSSマークのサンプル

補足2.マッシュアップについて
マッシュアップとは複数のWebサービスのAPIを組み合わせ、あたかも一つのWebサービスのようにする機能のことですが、厳密な定義はなく「既存リソースを最大限に再利用してニーズに合った新たなサービスを簡易に生み出す手法」ぐらいの意味の言葉と考えて良いでしょう。異なるソースの情報や機能をブラウザ側で併せて表示する手法を指すことが多かったのですが、サーバ側で情報加工してからブラウザに渡す方式も登場しています。
端的なマッシュアップの例はGoogle Mapの利用で、地図を自分が開発するWebページに表示できるというのが最も単純な使用法でしょう。天気情報サービスからデータが得られれば「天気マップ」を、犯罪発生情報が公開されていれば「ハザードマップ」を作ることができます。個人的にはハローワークから求人情報を取得して求人サイトのデータベースに加え、求人情報量を圧倒的に増やす仕組みを手掛けたことがあります。