5.11 Web標準の概要

POINT
■Web標準とは、Webサイト制作で標準的に利用される技術仕様の総称です。
■W3Cの技術仕様はさまざまな利害関係者の合意の元で策定されていて Web標準として広く認識されています。
■時代によって標準的な技術は変化するため、Webサイトの制作者や運営には柔軟な対応力が求められます。

【Web標準の必要性】
2000年代中盤から、Web標準(Web Standards)の大切さが強く認識されています。それまでは、Webブラウザごとにサポートしている技術が異なったり、独自拡張による大きな隔たりがあったため、ユーザーの環境によっては適切な表示や動作が望めない場合が多くありました。また、WebサイトやWebサービスがさまざまなWebブラウザで問題なく表示され、動作するように制作者や運営者も多大な労力を要しました。
その後、ジェフリー・ゼルドマンらがWeb Standards Project(WaSP)を1998年に設立しました。WebブラウザやWebオーサリングツールの開発元にW3Cの技術仕様などを適切にサポートするよう働きかけるなど、草の根的な活動を粘り強く展開し、Web標準サポートの流れが一気に加速しました。

主要な標準化団体の1つであるW3C(World Wide Web Consortium)の理念として「ユニバーサリティ」や「ユニバーサルアクセス」があります。どのようなデバイスやソフトウェアを用いても、Webコンテンツにアクセスし、情報を取得できることを意味します。W3Cが定める技術仕様、特にHTML、CSS、DOM、APIなどのフロントエンド技術、WCAGなどのアクセシビリティガイドラインは、Web標準として広く認識されています。
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DOM(Document Object Model)
HTMLやXML文書のためのプログラミング・インターフェース。文書の構造化された表現を提供し、プログラムから文書の構造やスタイル、コンテンツを変更します。

API(Application Programming Interface)
あるコンピュータプログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約あるいはインターフェイスのこと。ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様を指していましたが、最近ではWebサービスの機能を外部から利用するためのインターフェースもAPIと呼ばれ、むしろこちらが一般的かもしれません。

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)
2008年12月11日付の W3C 勧告「WCAG 2.0」 (原文は英語)を、情報通信アクセス協議会の「ウェブアクセシビリティ基盤委員会 (WAIC:Web Accessibility Infrastructure Committee)」が翻訳と修正をおこなって公開しているものです。


【Web標準のメリット】

Webページの作成において、Web標準に準拠し、HTMLは文書構造、CSSは視覚表現という役割分担を明確にすることで、メンテナンス性やアクセシビリティの向上、互換性や相互運用の向上が期待できます。
副次的な効果として、検索クローラーの構造認識がスムーズに行われるため、SEO(検索エンジン最適化)につながる可能性もあります。

2010年12月現在でのWeb標準技術

2010年12月現在でのWeb標準技術

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Ecma International(エクマ・インターナショナル)
情報通信システムの分野における国際的な標準化団体。旧、欧州電子計算機工業会。


【Web標準の今後】

Web標準も時代とともに変化します。HTML仕様は、HTML4.01からXHTML1.0へ、さらにHTML5の時代へと変わってきました。また「静的なWebページから動的なWebアプリケーションへ」という流れの中で、JavaScript、DOM、APIなどフロントエンド技術がますます重要になっています。特にAPIについては異なるWebアプリケーション同士でのデータ通信や連携、処理の効率化など、人々のインターネットコミュニケーションを裏側で支える重要な技術で、今後さらなる発展が期待されます。

現在はインターネットに接続できるデバイスやWebブラウザの機能、ユーザーのニーズなどあらゆる面で多様化が進んでいて、同時に技術も多様で複雑になっています。制作者や運営者は、Web標準をはじめとするさまざまな技術仕様の動向に、絶え間なくキャッチアップする努力が求められます。

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