企業のマーケティング活動でのインターネットの利用は、広告宣伝費の上昇を見れば一目瞭然です。
【メディアとしての価値の向上】
インターネットユーザーが増加すると、メディアとしての価値が重みを増します。誰でも情報発信を行うことが出来るのは個人だけでなく、企業にも同じ事が言えます。各企業は情報発信をWebサイトで発信するだけでなく、積極的な宣伝活動に取り組んでいるのです。
1994年、アメリカのオンラインマガジンHotWiredに電話会社AT&Tのバナー広告が掲載されて以降、多様な広告手法が生まれています。
【インターネットと広告】
企業にとってマーケティング活動とは、自身の価値提供を通じて顧客から対価をもらうために必要な行動を指すといって良いでしょう。この中には提供価値や提供財について顧客に認知してもらい、選択してもらい、継続して購入・利用してもらうための活動が含まれます。
インターネット黎明期に重要な情報発信を果たしていたポータルサイトは、広くユーザーが集まる場所として、TVやラジオ、新聞、雑誌といった従来のメディアと同じ役割を果たしていたといえます。検索機能も不十分な時期のインターネットでは、ユーザーもポータルサイトからさまざまな情報を入手し、回遊活動をスタートしていました。ユーザーが使うポータルサイトに表示されるバナー広告は、不特定多数にサービスを認知させ、Webサイトへ誘導するための役割を果たしていました。
インターネットに接続するための回線提供がインターネットビジネスの始まりだとすれば、次にビジネスとして期待されたのはこのインターネット上の広告業でしょう。バナー広告は従来のメディア広告と同じように露出回数が価値とされ、ポータルサイトはこぞってPV(ページビュー)を競い合うようになりました。また、その表現手段も様々なものが開発され、広告を別ウィンドウで表示するポップアップ広告や、アニメーションを取り入れた広告などが生まれました。
検索エンジン事業者であるGoogleが2000年に始めたGoogle AdWordsは、検索結果画面に広告を表示し、ユーザーがクリックした場合のみ課金されるPPC(Pay Per Click)という仕組みのリスティング広告であり、現在も広く利用されています。
また、ポータルサイト自体が広告活動を行いたい企業とタイアップして特集記事を作成したり、Webサイトの見た目を動的に変え、ユーザーの興味を喚起するような試みも存在します。CGMの隆盛によって、Webサイトのトラフィックがブログなどに分散し始めると、従来のバナー広告にも新しい広告手法が生まれることになりました。CGMによってターゲットユーザーの購買行動が変化したことを捉えて、広告の大量投下によるマーケティング手法自体を見直す機運も高まりつつあります。
→これが、紙の広告離れの非常に大きな一因であることを認知できていない人がまだまだ多く存在しています
具体的には、インターネット上で影響力を持つ有力なブログをメディアと見立てて商品やサービスを紹介してもらう「シーディング(種まき)」や、ブロガーを対象にした商品サンプリングやレビューサイトでのユーザー評価を高めるための施策、ティザーサイトなどを用いてユーザー間に期待感を込めた情報が伝播するのを利用した方法などです。これらの広告手法の誕生は、情報発信が必ずしもメディア側のもので無くなってきたことを意味していると言えるでしょう。コアなファンが発信する情報がロングテール商品を生み出したり、ブログや掲示板での炎上によって売れ行きに影響が出るなど、ユーザーからの情報発信が大きな力となっている例はあちらこちらで見る事が出来ます。
Webサイトを利用した広告の特徴は、サーバーログなどを利用して効果が定量的に計測出来る事で、その成果を評価する事が出来ます。その為の様々な指標を用いた効果検証が行われています。これらのデータ活用は近年目覚ましいものがあり、特定のサイトでの回遊歴などからユーザーの属性を割り出して、表示する広告をより適切なものにする行動ターゲティングという手法が発明され、さらに今後は個人情報を含まないCookieを異業種間で交換し、より広範に行動ターゲティングを行うデータエクスチェンジに期待が寄せられています。
→実際には既に億単位のユニークブラウザから行動履歴・属性データを割り出して狙ったオーディエンス(インターネットユーザー)にターゲティングする広告が始まっています
【ユーザーとのマーケティングコミュニケーション】
インターネットの特徴である双方向性は、ユーザーと企業との接点が増えたことも意味します。
黎明期の企業サイトではFAQ(よくある質問と回答)を充実させたり、問い合わせにeメールを活用することで、電話による問い合わせ数を減らし、ユーザーの不満を抑えつつもコスト削減を達成していました。
ブログの登場後は、よりカジュアルな情報発信を行い敷居の低いコミュニケーションを図るようになりました。先進的な企業では、Web2.0以降の新しいインターネットコミュニケーションに対応し、SNS内にコミュニティを設置してユーザーとより緊密なコミュニケーションを行ったり、自身のWebサイトでユーザーの声を反映するような仕組みを採用しています。Webサイトの技術進歩によって、動画を用いたコンテンツやインタラクティブなコンテンツを用意して、ユーザーにとって解り易い情報提供を行うこともマーケティングの1つと言えます。
ストリーミング動画は2000年前後から活用され始め、株主説明会の様子を配信したり、有名なアーティストのコンサート中継やその他のイベント中継などが試みられてきました。近年ではUSTREAM(ユーストリーム)というサービスを活用し、動画とチャット機能を組み合わせて小さな番組を作りコミュニケーションを図ったり、5億人のユーザーがいるとされているFacebookの機能である「Facebookページ」を利用した取り組みや、Twitterを利用してより即時的なコミュニケーションを行い、マーケティング活動に活用する試みが行われています。インターネットを利用したマーケティングは、Webサイトを用いる以外にも広がっていて、iPhoneやAndroid端末などのスマートフォンのアプリケーションを用いて新たな収益手段としたり、コミュニケーション媒体として活用する動きは今後も拡大していくと考えられます。全ての業態で活用出来るわけではありませんが、世界中からアクセス出来るグローバル性を活かして、無料でサービスを提供してユーザーを広く獲得し、高次な機能を有料で提供する「フリーミアム」と呼ばれる方法が生まれてきたこともインターネットならではの特徴と言えるかもしれません。
インターネットが新しいプラットホームとして出現し、顧客との多様な対話手段が出来た事によって、マーケティングも対話を重視したものに変化しています。このカンバセーショナルマーケティングを通じて、顧客と信頼関係を築いていくことが企業にとって必要不可欠となるでしょう。