インターネットの普及によって、新しいメディアとしての側面と新しいハードやソフトによるコミュニケーションが進化しています。この進化は非常にスピードが速く、ごく最近ではスマートフォンやタブレットの登場によって、インターネットコミュニケーションや次章で述べるマーケティングは劇的に変化しているといえるでしょう。
【コミュニケーション手段の変遷】
インターネットの普及によって、新しいメディアとしての側面と同時に、新しいコミュニケーション手段としても注目される動きが起きています。
2000年頃から 「2ちゃんねる」「さるさる日記(2011年にサービス終了)」など
2002年に始まったFriendsterによってSNSの人気が高まる
2008年ブログ開設者が1,300万人を超える(ブログシステムの日本語対応)
↓
ブログの登場によって初めて、HTMLを覚えなくても「誰でも情報発信ができる」ことが実現
SNSについては、日本ではmixi、GREEが代表的です。自分との関係性や趣味嗜好を可視化し、比較的閉じられた世界で何気ない情報発信が許容されているSNSが多くのユーザーを捉えたといえるでしょう。GREEやモバゲーはゲーミフィケーションという捉え方もできます。
これらのサービスの普及によって、eメールによる既知の人とのコミュニケーションから、インターネット経由で知り合った「友人の友人」との交流機会が増え、同時にインターネットを使ってコミュニケーションを図る文化が急速に広まっています。
2007年にはTwitterが始まり、ブログやSNSに代わるより緩やかなコミュニケーション手段が人気となっています。
2010年現在、世界一のユーザー数を抱えるSNSであるFacebookは、他社サービスとの連携によって利便性を上げたり、他のWebサイトのデータを取り込めるようにしてWebサイト内情報の価値を高めています。
・RSSを読み込み、ブログ更新を発信
・Twitterのつぶやきを読み込む
現在では、Lineを含め多くのコミュニケーション手段の変化がインフラやハードウェアの進歩にも大きな役割を果たしています。
【ハードウェアの進歩とコミュニケーション】
「iモード」や「EZweb」などのモバイルインターネットサービスの開始と携帯メールサービスは高価なパソコンを購入せずにインターネットの利用を可能にしました。
2010年当時で1世帯当たり携帯電話の普及率は92.7%、平均所有台数は2.3台とパソコンを凌駕。携帯電話が通信可能なエリアは全人口の居住エリアの95%以上をカバーし、どこにいてもインターネットに接続できる状況といえます。
また携帯電話は常に電源が入っていて、24時間すぐにインターネットにアクセスできる環境にあるといえるでしょう。
境内電話キャリアが通信料の定額制サービスを開始し、請求料金を気にせずアクセスできるようになったこともインターネットの利用を加速させています。
パソコンにおいても、ブロードバンド回線による高速な接続環境や、持ち運び可能なノートパソコンの低価格化によって普及し、同時に無線LANサービスや公衆無線サービスが開始したことにより屋外で高性能パソコンによるインターネット接続も可能になりました。さらに携帯電話の中でも、写真や動画の撮影機能やGPS機能が標準搭載されたり、音声通話機能付き小型パソコンとも呼べるスマートフォンが登場し、写真や動画も即座にインターネット上へ公開できるようになりました。ユーザーの発信する情報はテキストだけでなく多彩なコンテンツ表現が可能になったのです。
近年になって登場した新たな端末の代表としてタブレットやデジタルサイネージもあります。
タブレットは、キーボードとポインティングデバイスの使用を前提としたコンピュータの在り方を覆す新しい情報端末として期待されています。
デジタルサイネージは、主に屋外に設置された大型液晶ディスプレイです。ネットワークに繋がれていて、時間による配信内容の変更だけでなく、カメラや画像認証技術と合わせて前にいる人を判別して広告配信内容を変えることも出来ます。最近ではスマートフォンのアプリと連動させた新しい展開も出現しています。
【Web2.0によるコミュニケーションの変化】
ブログやSNSを契機としたCGMの台頭には、オープンソースによる安易なソフトウェア利用や、インターネットにアクセスし易くなった背景があります。
CGMによって多くの情報発信者が存在するようになった為、一般的に人気の無いニッチなものに関する情報も、世界規模でみた場合には十分な量を持った情報群となり、自分の趣味嗜好を更に掘り下げることが出来たり、今まで諦めていた同じ趣味の人との繋がりが出来るようになりました。
EC事業者は、ユーザーの力を利用してマスプロモーションでは行き届かない(あるいは採算の合わない)ニッチ商品の販売を行い、結果として商品売上を高めることが可能です。このような数多くのニッチ商品が少数ながら売れる状況を「ロングテール」(ロングテール現象)と呼びます。
また、GoogleやYahoo!!、Amazonをはじめとした様々な企業が、自身の持つデータを利用できるようにするAPIを提供していることも見逃せません。これによって、必要な機能を自分で開発しなくても、他社の持つデータを利用して効率的に様々なマッシュアップサイトを公開出来るようになりました。
RSSなどのシンジケーション技術やAPIによって、どのサイトを訪れるかよりも、どの情報を入手するかというコンテンツ自体の方が重要になり、利用するサービスが何かよりも、コミュニケーションの方法や内容が重視されるようになりました。
【リッチインターネットアプリケーションと ユーザーエクスペリエンス】
ブロードバンド化と定額料金制への移行を契機に、大容量インターネットコンテンツが増えています。
Webサイトにインタラクティブな要素を加えるためには、JavaやPerlなどのプログラム言語でWebプログラムを作成したり、JavaScriptによって動きのあるHTMLを作成する以外に、FlashやSilverlightと呼ばれるファイルフォーマットを使用する方法があります。FlashはAdobe Systems社が提供する技術で、アニメーションのような動きを作成する他、動画や音声の配信も可能です。同様の機能はMicrosoft社のSilverlightでも実現できますが、ほとんどの環境でプラグインの追加インストールを必要とします。
これらの技術を用いて、単純なHTMLで配信されたページよりも操作性や表現力に優れたWebアプリケーションがRIA(リッチインターネットアプリケーション)です。従来のHTMLでは不可能だった画面遷移や、魅力的で使い易いインターフェイスを提供するなどより多くのユーザーにとって直感的に利用出来る工夫がされています。
RIAでは、画面内にナビゲーターを登場させWebアプリケーションの操作方法を語ったり情報入力のアシスタントを行うPIP(Person in Presentation)などの手法も見られます。
また、JavaScriptとXMLを利用して、ページの切り替えを行うことなくページの一部を書き換えて情報を更新するAjax(Asynchronous Javascript +XML)も広く用いられています。
両社に共通するのは、クリックやマウスオーバーによって、新しくページを読み込む紙芝居的なWebサイトから、映画のようにスムーズに流れるWebコンテンツを実現している点です。
※表示位置が変わって目が踊らないなどのユーザビリティーにも考慮された技法ですがスマートフォン、タブレットやWindows8のタッチ式ディスプレイには注意が必要です。
これらの技術採用によってインターネットユーザーに新たな体験(ユーザーエクスペリエンス)を与え、より利便性の高いコミュニケーション手段を提供しているのです。
また、RIAとRSSを組み合わせる事によって、Webブラウザを用いなくてもインターネット上の情報を取得し、閲覧することが可能になりました。これはウィジェット(Widget)あるいはガジェットと呼ばれています。ウィジェットはFlashとも連携しているAIR(Adobe Integrated Runtime)と呼ばれる技術や、Silverlightを用いて作られた小規模なデスクトップアプリケーションです。インターネット上の情報をRSSフィードとして取得し、アプリケーション上のデータを更新する事が可能です。この技術を用いた例としては、天気予報、為替相場、SNSの更新情報を通知するアプリがあります。
新しい技術の登場やインターネット接続環境の向上によって、私達の情報取得量は飛躍的に増大しています。マスメディアからの情報だけでなく、知人からの情報や、インターネット上の集合知などを同等の情報源として扱うようになり、企業のマーケティング活動等にも大きな影響を及ぼしています。
一方で、膨大な情報の中でどれを選び、どれを捨てるのか、というフィルタリング能力を身に付けることが問われています。使うのは人であるということですね。